繭と蜘蛛の糸

私達は生まれてから、たくさんの愛に守られてきました。

 

蚕の繭ようにほんわりと美しいものに包まれて。

 

とても安心できる場所。

 

最初のその場所から、だんだんと外の世界へ。

 

わたしたちは自由に羽ばたくはずでした。

 

しかし、自分の思いとは裏腹にそこには不自由がありました。

 

 

やさしく美しかった蚕の繭は、蜘蛛の巣のようにわたしの回りに張り巡らされ、その小さな隙間の可能性しか持ち合わせていません。

 

それはまるで愛のように、それはまるで「あなたのためよ」というように、とても美しい糸なんだけれど。

 

わたしたちは、蜘蛛の巣にかかってしまった蛾のように、身動きがとれません。動けば動くほどがんじからめになっていきます。

 

じたばたせずに、頑張らずに、冷静に、わたしを絡めている蜘蛛の糸一本一本を取り除き、わたしの存在というエネルギーを解き放ち、いまここで羽ばたくことで蜘蛛の巣から抜け出すのです。

 

そうして、羽ばたいたその先で眺めると、その蜘蛛の巣も優しく美しい愛であったことに気づくのです。

 

わたしたちが恐れから握りしめていた、それを掴んでいれば安全だと思い込んでいた愛の糸。

 

でももう必要がないと気付いた今、わたしたちは蜘蛛の糸を手放し、羽ばたき、感謝と共に愛の世界を進んで行くことができるのです。